東京高等裁判所 昭和28年(う)278号 判決
被告人 島村次男
〔抄 録〕
一、弁護人の論旨第一点について。
記録を調査するに、原審第一回公判調書の記載によれば、昭和二十七年十二月三日開廷された原審第一回公判には、「検察官最相公平」が出席したことが認められるのに、即日、同公判において宣告された原判決の判決書には、「検察官事務取扱検察事務官吉田稔出席の上」と記載されていることは、所論指摘のとおりである。而して、刑事訴訟法第五十二条の規定によれば、公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができるものであるから、原審第一回公判に出席した検察官は、前示の「最相公平」より外にはないものというべく、従つて、原判決書には、公判に出席した検察官と異る検察官の氏名を記載したことになるので、刑事訴訟規則第五十六条第二項に違反した違法があるものといわなければならないが、しかし、このような形式上の違法は、判決の内容自体に影響を及ぼさないことが明らかであるから、これをもつて原判決破棄の理由とすることはできない。
二、刑事訴訟規則第四十四条第一項第五号に。
公判調書の必要的記載事項として「検察官の官氏名」が挙げられていること、及び、原審第一回公判調書には、「検察官最相公平」とだけ記載されていることは、いずれも、所論のとおりであるが、しかし、「検察官」という用語は、憲法・検察庁法・刑事訴訟法等に現われたところによれば、検察の職務を行う官吏である検事総長・次長検事・検事長・検事及び副検事等の総称であると解されるので、これを前示刑事訴訟規則第四十四条第一項第五号にいわゆる官名と認めることができるものというべく、従つて、所論のように前掲原審公判調書に「検察官最相公平」と記載されているのは、「検事又は副検事最相公平」と記載されているのと同じであるから、これをもつて、刑事訴訟規則第四十四条第一項第五号の要求する事項の記載を欠くものということはできない。